法人1年目の年末年始、会社に来る「締め切り」一覧
―12月から2月にかけて、会社には期限のある手続きが集中します
年末調整、源泉所得税の納付、法定調書、給与支払報告書、償却資産の申告。法人として初めて迎える年末年始に、何を、いつまでに、どこへ出すのかを一覧にまとめました。
法人を設立して最初の年末は、個人事業のころにはなかった手続きが一度にやってきます。役員ひとりの会社であっても、役員報酬を支払っていれば、会社は「給与の支払者」としての役割を担うことになるためです。
これらの手続きは、ひとつひとつはそれほど複雑ではありません。ただ、提出先が税務署と市区町村に分かれていたり、期限が1月20日、1月31日と近接していたりするため、全体像をつかまないまま年を越すと、気づいたときには期限が過ぎていた、ということになりがちです。
本記事では、法人1年目の経営者の方が年末年始に向き合うことになる主な手続きを、期限の順に整理します。あわせて、今年(令和8年分)の手続きで変わった点や、法人成りした年ならではの注意点にも触れていきます。
まず全体像:12月から2月までの締め切り
最初に、年末年始の主な手続きを時期ごとに並べておきます。会社の状況によって必要のないものもありますが、まずはこの流れを頭に入れておくと、準備の段取りが立てやすくなります。
| 12月 | 年末調整(12月に支払う最後の給与・賞与で精算)/翌年分の扶養控除等申告書の回収 |
|---|---|
| 1月20日 | 源泉所得税の納付(納期の特例を受けている場合、7月から12月までの分) |
| 1月31日 | 法定調書・法定調書合計表の提出(税務署)/給与支払報告書の提出(市区町村)/償却資産の申告(市区町村) |
| 2月〜3月 | 12月決算法人の決算・申告(2月末)/法人成りした年の個人の確定申告(3月15日) |
なお、1月31日が期限とされている手続きは、期限の日が土曜日・日曜日・祝日にあたる場合、翌日以降の平日が期限になります。令和9年は1月31日が日曜日にあたるため、法定調書などの提出期限は2月1日(月)とされています。償却資産の申告期限の扱いは、念のため事業所のある市区町村の案内で確認しておくと安心です。
ポイント:どの手続きも、もとになるのは1年間の給与や支払いの記録です。月々の記帳と給与計算が整っていれば、年末年始の作業の大半は、その集計と書類への転記で済みます。
年末調整:役員だけの会社でも必要になる
年末調整は、会社が毎月の給与から差し引いてきた源泉所得税について、1年間の正しい税額を計算し直し、過不足を精算する手続きです。対象となるのは、会社に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人で、従業員だけでなく、役員報酬を受け取っている役員も含まれます。
「従業員を雇っていないから関係ない」と思われがちですが、役員報酬を支払っている会社であれば、社長ご自身の分の年末調整が必要になります。法人化して最初の年は、この点で戸惑われる方が少なくありません。
集める書類
年末調整では、役員や従業員から、次のような書類を提出してもらいます。
- 扶養控除等申告書(今年分の内容確認と、翌年分の提出)
- 基礎控除申告書・配偶者控除等申告書などを兼ねた申告書
- 生命保険料・地震保険料の控除証明書
- 国民年金保険料やiDeCoの掛金の控除証明書(本人が支払っている場合)
- 住宅借入金等特別控除の申告書(2年目以降の方)
令和8年分は、計算と申告書の様式が変わっています
令和8年分の年末調整では、令和8年度の税制改正により、基礎控除や給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の見直しなどが反映されます。年末調整で使う申告書の様式も変更されていますので、前年の様式を流用せず、国税庁が公表している令和8年分の様式を使うことが大切です。給与計算ソフトを使っている場合は、令和8年分の年末調整に対応した版に更新されているかも確認しておきましょう。
年末調整の結果、税金を納めすぎていた場合は本人に還付し、不足していた場合は追加で徴収します。精算は12月に支払う最後の給与で行うのが一般的ですが、間に合わない場合は翌年1月の給与で行うこともあります。
1月20日:源泉所得税の納付(納期の特例)
給与から差し引いた源泉所得税は、原則として、給与を支払った月の翌月10日までに納付します。ただし、給与の支払いを受ける人が常時10人未満の会社は、届出をすることで、半年分をまとめて納付できる「納期の特例」を受けることができます。法人設立時に、この届出を済ませている会社も多いのではないでしょうか。
| 1月から6月までの分 | 7月10日までに納付 |
|---|---|
| 7月から12月までの分 | 翌年1月20日までに納付 |
年末調整で精算した後の金額を納付することになるため、年末調整を年内に終えておくことが、1月20日の納付をスムーズに行う前提になります。納付書の作成やe-Taxでの納付の準備も、年明けすぐに取りかかれるよう段取りしておきましょう。
役員報酬以外の源泉所得税も忘れずに
納期の特例の対象には、給与のほか、税理士や司法書士などの個人の専門家に支払った報酬から差し引いた源泉所得税も含まれます。給与以外の支払いで源泉徴収をしている場合は、その分も合わせて納付が必要です。納付が遅れると、延滞税や不納付加算税がかかる場合がありますので注意が必要です。
法定調書と給与支払報告書:提出先は2か所
年明けの手続きのなかで、最も分かりにくいのがこの部分かもしれません。1年間に支払った給与や報酬の内容を、税務署と市区町村の両方に報告する必要があるためです。
| 税務署へ | 法定調書合計表と、報酬・料金などの支払調書(一定額を超えて個人の専門家などに報酬を支払った場合) |
|---|---|
| 市区町村へ | 給与支払報告書(給与を支払った人ごとに、その人が1月1日時点で住んでいる市区町村へ) |
源泉徴収票の税務署への提出が、原則不要に
これまでは、一定額を超える給与を支払った役員などについて、税務署に源泉徴収票を、市区町村に給与支払報告書を、それぞれ提出する必要がありました。改正により、令和9年1月1日以後は、市区町村に給与支払報告書を提出すれば、税務署に源泉徴収票を提出したものとみなされることとされています。今回の提出から、税務署向けの源泉徴収票を別に作成する手間がなくなる形です。
ただし、源泉徴収票そのものが不要になるわけではありません。役員や従業員本人には、これまでどおり源泉徴収票を交付する必要があります。また、法定調書合計表の提出や、報酬・料金などの支払調書の提出は引き続き必要です。
電子での提出が必要になる場合も
法定調書は、前々年に提出すべきだった枚数が一定数(現在は30枚以上)を超える種類について、e-Taxなどの電子的な方法で提出することが義務づけられています。設立1年目の会社がこの基準に該当することは多くありませんが、電子での提出は枚数にかかわらず利用できます。給与計算ソフトやクラウドのサービスから、そのまま電子で提出できる場合も増えています。
支払調書のために、取引先の情報を集めておく
税理士やデザイナーなど、個人の専門家に報酬を支払っている場合、支払調書の作成には、相手の住所や氏名、マイナンバーなどの情報が必要になります。年明けに慌てて問い合わせることのないよう、年内のうちに支払先の一覧と必要な情報をそろえておくとよいでしょう。
償却資産の申告:1月1日に持っている資産を届け出る
見落とされやすいのが、固定資産税の一種である償却資産の申告です。会社が1月1日時点で所有している、事業用の機械や備品、パソコン、内装の造作などについて、その内容を市区町村に申告します(東京23区の場合は都税事務所)。
償却資産には、課税標準額が150万円未満であれば固定資産税が課されない「免税点」の制度があります。ただし、免税点を下回る場合でも、申告そのものは必要とされている自治体が多くあります。「税金がかからないから出さなくてよい」とは限らない点に注意が必要です。
対象になるもの、ならないもの
一般に、法人税の計算で減価償却をしている資産が対象となります。一方で、取得したときに全額を経費にした少額の資産や、3年で均等に償却する一括償却資産は、原則として申告の対象外とされています。自動車税の対象となる車両や、ソフトウェアなどの無形の資産も対象外です。
ここで注意したいのが、少額減価償却資産の特例を使って一括で経費にした資産の扱いです。この特例を使った資産は、法人税の計算上は全額を経費にしていても、償却資産の申告の対象になるとされています。取得した資産をどの方法で処理したかによって申告の要否が変わるため、固定資産台帳と照らし合わせて確認しておくことが大切です。
法人成りした年は、個人の確定申告も残っている
個人事業から法人成りした年は、会社の手続きとは別に、経営者個人としての確定申告も必要になるのが一般的です。法人化する前の期間は個人事業として事業を営んでいたため、その期間の事業所得を申告しなければならないからです。
役員報酬と、個人事業の所得の両方を申告する
法人化した後に会社から受け取った役員報酬は、会社で年末調整を受けますが、個人事業の所得がある以上、年末調整だけでは税額が確定しません。役員報酬の源泉徴収票と、個人事業の期間の決算書をもとに、翌年3月15日までに確定申告を行うことになります。
個人事業の「最後の決算」で気をつけたいこと
個人事業として最後となる年の申告では、廃業にともなう処理が必要になる場合があります。たとえば、個人事業のころに計上していた売掛金や買掛金の整理、事業用の資産を会社に引き継いだ場合の扱い、法人化の時点で未払いだった費用の計上などです。個人事業税についても、廃業した年は通常と異なる取扱いがあります。
法人化にともなう手続きの全体像については、法人化したら最初に押さえておきたい手続き7選の記事でも整理しています。年末年始の手続きと時期が重なるため、早めに資料をそろえておくと、会社と個人の両方の作業を落ち着いて進められます。
11月から始める、年末年始の準備
ここまで見てきた手続きは、年が明けてから一斉に取りかかると、どうしても慌ただしくなります。逆に、11月から少しずつ準備を進めておけば、12月と1月の作業はぐっと軽くなります。
- 役員・従業員に、年末調整の書類の提出を依頼する(11月中)
- 給与計算ソフトが令和8年分の年末調整に対応しているか確認する
- 個人の専門家への支払いを洗い出し、支払調書に必要な情報をそろえる
- 固定資産台帳を確認し、1月1日時点で持っている資産を整理する
- 法人成りした方は、個人事業の期間の帳簿と書類をまとめておく
クラウドのサービスで、集計の手間を減らす
給与計算や年末調整、法定調書の作成は、クラウドの給与計算ソフトを使うことで、作業の多くを自動化できる場合があります。役員や従業員がスマートフォンから申告書の内容を入力し、そのデータをもとに年末調整の計算や源泉徴収票の作成まで進められるサービスもあります。会計ソフトと同じく、導入しただけで楽になるわけではありませんが、運用を整えておけば、翌年以降の作業は確実に軽くなります。日々の経理の運用の整え方については、クラウド会計を入れたのに、経理が楽にならない理由の記事も参考にしてください。
法人として初めての年末年始は、手続きの種類の多さに驚かれるかもしれません。ただ、一度経験してしまえば、2年目からは同じ流れの繰り返しです。最初の年に手順を整理しておくことが、その後の毎年の負担を左右します。
年末調整から2月の提出まで、確認します
役員だけの会社か、従業員がいるか、外部の専門家に報酬を支払っているか、法人成りした年か。会社の状況によって、必要な手続きは変わります。年末調整の書類を集め始める11月が、ご相談いただくのに適したタイミングです。
無料相談はこちら※本記事は、2026年11月時点の法令等をもとに、令和8年分の手続きについて一般的な内容をまとめたものです。提出期限や提出先、提出の要否は、会社の状況や自治体によって異なる場合があります。最新の情報は、国税庁や各市区町村の公表資料でご確認ください。社会保険に関する手続きについては、社会保険労務士にご相談ください。実際の手続きにあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

