もらえるのに知らない人が多い「小規模事業者持続化補助金」
―販路開拓の取組を、国が後押ししてくれる制度です
小規模事業者を対象とした代表的な補助金について、対象となる方、使いみち、そして見落とされがちな税務上の取扱いまでを整理しました。
「補助金は大企業や、特別な技術を持った会社のためのもの」と思われている経営者の方は少なくありません。しかし実際には、従業員数が少ない事業者ほど対象になりやすい制度も存在します。その代表格が、小規模事業者持続化補助金です。
ホームページの制作、チラシの作成、店舗の改装、展示会への出展。こうした販路開拓のための取組に対して、その費用の一部が補助される仕組みです。法人成りされたばかりで、これから顧客を増やしていこうという段階の事業者にとって、相性の良い制度といえます。
今回は、この補助金の基本的な考え方と、実務上つまずきやすいポイントを整理します。なお、補助金は公募回ごとに枠や要件が見直されることが多い制度です。具体的な条件については、必ず最新の公募要領をご確認ください。
そもそも「小規模事業者」とは誰のことか
この補助金の対象となるのは、その名のとおり小規模事業者です。ここでいう小規模事業者は、常時使用する従業員の数によって定義されており、業種によって基準が異なります。
| 商業・サービス業 (宿泊業・娯楽業を除く) | 常時使用する従業員が5人以下 |
|---|---|
| サービス業のうち 宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員が20人以下 |
| 製造業その他 | 常時使用する従業員が20人以下 |
ここでポイントになるのが、「常時使用する従業員」に会社の役員や個人事業主本人は含まれないとされている点です。つまり、代表者お一人の会社も、ご家族で運営されている法人も、従業員を雇っていない個人事業主も、対象となり得ます。法人成りしたばかりで従業員がいない、という状況こそ、まさに対象になりやすいわけです。
「うちのような小さな事業者が対象になるはずがない」と思い込んで調べもしなかった、というのは、実はかなりもったいない状態です。
ポイント: 従業員数の考え方には、パート・アルバイトの取扱いなど細かい判断を要する部分があります。ぎりぎりの人数の場合は、事前に確認しておくと安心です。
何に使えるのか、いくら補助されるのか
この補助金は、販路開拓や、それに伴う業務効率化のための取組を支援するものです。対象となる経費の例としては、次のようなものが挙げられます。
- ホームページやECサイトの制作・改修
- チラシ・パンフレット・看板などの広報費
- 展示会・商談会への出展費用
- 新商品の開発、新サービス提供のための機械装置の導入
- 店舗改装など、集客力向上のための工事
補助率と補助上限額は公募回や申請する枠によって変動しますが、通常枠であれば補助率3分の2、上限50万円程度が基本的な水準として設定されてきました。加えて、賃上げや事業承継といった一定の取組を行う事業者向けに、上限額を引き上げた特別枠が設けられることもあります。
ウェブ関連費には上限が設けられている
実務上注意したいのが、ホームページ制作などのウェブサイト関連費です。この経費区分については、補助金交付申請額のうち一定割合(4分の1程度)を上限とする取扱いが設けられており、また、ウェブサイト関連費のみでの申請は認められないとされてきました。
「ホームページを作りたいから、その全額を補助してもらおう」という発想では計画が通りにくく、他の販路開拓の取組と組み合わせて設計する必要がある、ということになります。
申請には商工会・商工会議所の関与が必要
この補助金の特徴として、申請にあたって商工会または商工会議所が発行する「事業支援計画書」が必要とされている点が挙げられます。
つまり、自分だけで書類を揃えて出せばよいというものではなく、地域の商工会等に相談し、経営計画の内容を確認してもらったうえで、この書類を発行してもらうという段取りが必要になります。
実質的な締切は、公募の締切より前にある
ここが最も見落とされやすい点です。事業支援計画書の発行には、商工会等の受付締切が別途設けられており、それは補助金そのものの申請締切よりも早い日付に設定されているのが通常です。
「締切まであと1週間あるから大丈夫」と思っていたら、支援計画書の発行受付はすでに終わっていた、ということが起こり得ます。申請を検討される場合は、まず商工会等の受付締切から逆算してスケジュールを組んでいただくのが確実です。
最大の落とし穴:交付決定前の発注は対象外
補助金の実務で、最も多いトラブルがこれです。
補助対象となるのは、原則として交付決定を受けた後に発注・契約し、支払った経費に限られます。申請書を提出した時点でも、採択の通知を受けた時点でもなく、その後の「交付決定」を待つ必要があります。
「早く進めたいから」と、採択の連絡を受けてすぐに制作会社へ発注してしまうと、その費用が補助対象から外れてしまうおそれがあります。せっかく採択されたのに補助を受けられない、という事態は避けたいところです。
ポイント: 発注書・契約書・請求書・振込記録といった証拠書類は、日付が確認できる形で一式を保存しておく必要があります。「現金で払って領収書だけ」という進め方は、後の実績報告で困ることになりがちです。
補助金は「後払い」。資金繰りの準備が要る
補助金は、原則として精算払いです。つまり、事業者がいったん全額を自己資金で支払い、実績報告を経て確定した後に、補助金が振り込まれるという流れになります。
たとえば100万円の取組に対して3分の2の補助を受ける場合でも、まずは100万円を用意して支払う必要があります。手元に入ってくるのは、その事業が完了し、報告書の審査が済んだ後です。申請から入金までを通算すると、相応の期間を要することになります。
「補助金がもらえるから」という前提で資金計画を組んでしまうと、途中で資金が足りなくなるおそれがあります。補助金の活用を検討される際は、支払時期と入金時期のズレを織り込んだ資金繰りの確認が欠かせません。場合によっては、つなぎの資金調達を並行して検討することもあります。
意外と知られていない、補助金の税務上の取扱い
ここは、税理士としてぜひお伝えしておきたい部分です。
補助金を受け取ると、それは事業の収入となります。非課税ではありませんという点が、まず押さえておきたいところです。法人か個人事業かによって、根拠となる法律と呼び方が変わります。
| 法人の場合 | 法人税法上、原則として益金に算入されるものとされています。受け取った補助金に対しても法人税等が課される可能性があります。 |
|---|---|
| 個人事業の場合 | 所得税法上、原則として事業所得の総収入金額に算入されるものとされています。事業に関連して受け取ったものであれば、事業の収入として扱われることになります。 |
「50万円もらえた」と思っていたら、そのうち一定額は税金として出ていく。この点を想定していないと、後になって資金繰りの見込みが狂うことがあります。
収入に計上する時期にも考え方がある
補助金をいつの時点の収入とするかについては、原則として交付決定のあった日を基準に考えるものとされています。実際に入金された日ではないという点に注意が必要です。
法人であれば交付決定のあった日の属する事業年度、個人事業であればその日の属する年分が原則ということになります。決算期や年末をまたいで手続きが進む場合には、どちらの期・年分の収入になるのかを確認しておく必要があります。
固定資産を取得した場合の特例
補助金を使って機械装置などの固定資産を取得した場合、一定の要件を満たすときは、課税を繰り延べる特例が設けられています。こちらも、法人と個人事業とで制度の名称が異なります。
| 法人の場合 | 国庫補助金等の圧縮記帳。補助金相当額だけ資産の帳簿価額を減額することで、その事業年度の課税所得への影響を抑える仕組みです。 |
|---|---|
| 個人事業の場合 | 国庫補助金等の総収入金額不算入。要件を満たす場合に、補助金相当額をその年分の総収入金額に算入しないことができるとされています。 |
ただし、いずれも税負担そのものをなくすものではありません。取得した資産の減価償却費が減ることなどを通じて、課税のタイミングを将来に繰り延べる性質のものです。また、適用には確定申告書への記載など所定の要件が定められていますので、該当しそうな場合は事前にご相談いただくのが確実です。
採択されるために、計画書で意識したいこと
申請すれば必ず採択されるわけではなく、審査を経て採否が決まります。計画書を作成する際には、次のような視点を意識しておくと、内容が組み立てやすくなります。
| 自社の現状を 具体的に書く | 強みと弱み、顧客の層、競合との違いを、抽象的な言葉ではなく具体的に記述します。数字で示せる部分は数字で示します。 |
|---|---|
| 取組と課題が つながっている | 「なぜその取組が必要なのか」が、現状の課題から自然に導かれる構成になっているか。ホームページを作りたいから作る、では説得力が生まれません。 |
| 効果を 見通せる | その取組によって、どの顧客層に、どのように届き、結果として売上がどう変わると見込むのか。ここに根拠のある数字を置けるかどうかが分かれ目になります。 |
お気づきかもしれませんが、この構成は融資の際の事業計画書と考え方が共通しています。自社の現状を数字で把握し、課題を言葉にし、打ち手とその効果を筋道立てて説明する。この作業は、補助金の採否にかかわらず、経営を整理するうえで意味のある時間になります。
補助金の活用、税務まで含めてご相談ください
補助金は、申請して終わりではなく、資金繰りの設計、実績報告に向けた証憑の整理、そして受け取った後の税務処理まで含めて考える必要があります。日々の会計をお預かりしているからこそ、貴社の数字を踏まえたご提案ができると考えております。「うちは対象になるのだろうか」という段階のご相談も歓迎しております。
無料相談はこちら※本記事は、一般的な考え方について執筆時点の情報をもとに解説したものです。補助金の要件・補助率・上限額・対象経費は公募回ごとに見直されることがあり、また採択の可否は個別の審査によります。実際のご検討にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認いただくとともに、税理士等の専門家にご相談ください。


