「会社を大きくする」ステージで出てくる資産管理会社・持株会社の話

―会社が育ってきたら、考えておきたい選択肢

今すぐの話でなくても、選択肢を知っているかどうかで、数年後の判断のしやすさが変わります。資産管理会社と持株会社の基本的な考え方を整理しました。

法人化されたばかりの時期には、まだ縁遠く感じられるテーマかもしれません。しかし事業が軌道に乗り、利益が積み上がり、ご自身の資産が増えてくると、「資産管理会社」や「持株会社」という言葉が視野に入ってきます。

これらは、それ自体が節税策なのではなく、あくまで資産や株式の持ち方を設計するための器です。器の形が変われば、税負担も、承継のしやすさも変わってきます。今回は、その基本的な考え方と、検討する際に押さえておきたい注意点を整理します。

POINT 01

資産管理会社とは何か

資産管理会社とは、個人が保有する不動産や有価証券などの資産を、法人名義で保有・管理・運用するために設立する会社を指します。法律上「資産管理会社」という特別な制度があるわけではなく、通常の株式会社等を、そうした目的で使っているというのが実態です。

個人で資産を保有する場合と比べて、次のような違いが生じます。

税率構造個人の所得税は累進課税ですが、法人税等はおおむね一定率です。所得水準が高くなるほど、法人のほうが税率面で有利になる領域が生じます。
経費の範囲法人では、事業に関連する支出について、個人の場合よりも幅広く必要経費として扱える場面があります。ただし何でも認められるわけではなく、事業関連性の説明が求められます。
所得の分散ご家族を役員とし、実態に見合った役員報酬を支給することで、所得を分散できる場合があります。実態を伴わない支給は否認されるリスクがあるため、勤務実態が前提となります。
相続時の扱い資産そのものではなく「株式」として承継することになるため、評価や分割の考え方が変わります。

一方で、法人には赤字であっても発生する法人住民税の均等割や、決算・申告に係るコストがかかります。資産の規模がある程度に達していないと、こうした維持コストのほうが上回ってしまう可能性があります。

POINT 02

持株会社(ホールディングス)とは何か

持株会社とは、事業会社の株式を保有することを主たる目的とする会社です。事業を行う会社の上に、その株式を持つ会社を置く、という二階建ての構造をイメージしていただくと分かりやすいかと思います。

この形にすることで、次のような効果が期待される場面があります。

グループ内での資金の融通

事業会社から持株会社への配当については、一定の要件のもとで受取配当等の益金不算入の規定が適用され、グループ内で資金を移動しやすくなる場合があります。複数の事業を営む場合や、新規事業への投資原資を確保したい場合などに検討されます。

事業承継における選択肢の広がり

後継者が持株会社を通じて事業会社の株式を保有する形をとることで、承継の設計に柔軟性が生まれる場合があります。また、事業会社の株式を持株会社に移すことに伴い、株価の評価方法が変わる可能性もあります。

事業ごとのリスク遮断

複数の事業を別会社で運営し、その上に持株会社を置くことで、一方の事業のリスクが他方に及びにくい構造をつくることができます。

POINT 03

持株会社化で株価対策を考える際の注意点

持株会社化は、事業承継における株価対策の文脈で語られることが多いテーマです。ただし、この分野には専門的な論点が多く、安易に「持株会社にすれば株価が下がる」と考えるのは危険です。

株式等保有特定会社に該当するリスク

非上場株式の相続税評価においては、総資産に占める株式等の割合が一定以上である会社は「株式等保有特定会社」と判定され、原則として純資産価額方式による評価が求められることとなります。持株会社は構造上、資産の大半が子会社株式となりやすいため、この判定に該当しやすいという性質があります。

該当した場合、通常であれば評価額を引き下げる効果が期待される類似業種比準方式が使えなくなり、かえって評価額が高くなることも考えられます。この点を踏まえずに設計してしまうと、意図と逆の結果を招くおそれがあります。

行為計算の否認リスク

租税回避のみを目的とした不自然な組織再編については、税務当局から否認される可能性があります。持株会社化にあたっては、事業上の合理的な理由を説明できることが重要になります。

タイミングと期間の問題

株価対策として資産を移転する場合、取得後3年以内の土地・建物については相続税評価額ではなく通常の取引価額で評価するといった規定もあり、実行のタイミングによって効果が変わってきます。「思い立ったらすぐに効果が出る」ものではなく、数年単位の計画が必要になる領域です。

ポイント: 持株会社化の効果は、会社の資産構成、業種、利益水準によって大きく変わります。一般論としての説明はできても、「貴社の場合にどうか」は、実際に数字を当てはめて試算してみないと分からない、というのが正直なところです。

POINT 04

検討を始めるタイミングの目安

これらの仕組みは、どちらも「作ればすぐに得をする」という単純なものではなく、会社の状況や将来の計画によって向き不向きがあります。一般的には、次のようなタイミングで検討が始まることが多いように思います。

  • 会社の利益や内部留保が積み上がり、株価の上昇が見込まれるようになったとき
  • 複数の事業や不動産など、資産の種類・規模が増えてきたとき
  • 後継者への事業承継を具体的に考え始めたとき
  • 新規事業への進出にあたり、既存事業とリスクを分けたいと考えたとき

特に事業承継を見据える場合、株価は毎期の利益によって変動していきます。業績が良い会社ほど株価は上がっていくため、「そのうち考えよう」と先延ばしにしているうちに、対策の選択肢が狭まってしまうことがあります。まだ具体的な予定がなくても、現時点の株価を把握しておくだけでも意味があります。

POINT 05

専門家を交えて検討すべき理由

資産管理会社の設立や持株会社化には、法人税、所得税、相続税、そして場合によっては消費税まで、複数の税目が複雑に絡み合います。加えて、会社法上の手続きや、金融機関との関係(既存借入の取扱いなど)も考慮する必要があります。

設計を誤ると、期待した効果が得られないばかりか、かえって税負担が重くなったり、後戻りできない状態になったりすることもあり得ます。また、一度作った法人を解散するにも、相応の手間とコストがかかります。

「まず作ってから考える」のではなく、目的を明確にしたうえで、複数の選択肢を比較して決めるという順序を踏むことが、この分野では特に大切だと考えています。

将来を見据えたご相談も、お気軽に

資産管理会社や持株会社は、今すぐ実行しなくても「知っておく」ことで将来の選択肢が広がるテーマです。まずは現状の株価を把握するところから、事業の成長段階に合わせた進め方をご一緒に検討いたします。相続・事業承継のご相談も承っております。

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※本記事は、一般的な考え方について執筆時点の情報をもとに解説したものです。組織再編や株価評価は個別性が非常に高い分野であり、会社の状況によって結論が大きく異なります。実際のご検討にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。